我々建築家にとって家相は極めて厄介かつデリケートな問題です。気にしない人には何の意味を持たなくとも、気になる人には重要なテーマとなり得ます。それは往々にして敷地環境等、物理的な状況を鑑みた設計手法と相反します。家相は古代中国で唱道され、日本でも平安京を造営するに際し、この概念が既に影響していました。
多少でも家相や気学を学んできた私たちにとって、これらを全く無視する訳にはいきません。
迷信、言い伝え、占いなどと呼ばれる家相や気学、これらは過去の先達が長い歴史を積み重ねた経験則、すなわち統計学として理解できるからです。最先端の技術を駆使し、より新しい技術を目指す設計者や技術者に限って過去のデータや経験則に重きを置くものです。実際に過去の内装材として使用されていた漆喰がメンテナンス性の高いビニールクロスに代わり、今また自然や健康が問われる中で再認識され、珪藻土と共に注目されていることはその例と言えます。
いずれにしても家相を考える場合、限られた敷地環境の中で採光、通風と言う問題を含め、どの程度条件を満たすかを建築家と検討する事が大切です。
但し、中には家相の事は全く知らないと言う設計者もいます。その時は要注意です。
数多くの作品を手掛けている建築家であれば多かれ少なかれそう言う場面にぶつかり、同時に学んでいるはずだからです。経験も学ぶ意識も無い建築家に高度なデザインと完成度の高い作品を提案できるか、はなはだ疑問です。
家相を気にする余り快適空間を全く損なうようでは困りものですが、困った時や迷った時に先人の知恵をいい意味で拝借できる、そんな役割こそが家相本来の目的ではないでしょうか。
家相ワンポイント講座
〜鬼門について〜
北東(表鬼門)は丑(うし)の方角で、真夜中の2時から3時(いわゆる、草木も眠る丑三つ時)を指します。気学ではこの時間帯に人体を弱らせる邪気(エネルギー)が発生すると言われ、人間が熟睡し体を休める習慣がついたのは、自然の理に叶うものとされています。
その対極に位置する南西(裏鬼門)は未(ひつじ)の方角で昼間の2時から3時を指します。昼休みの後デスクに戻り、1時間位仕事をするとやたらあくびが出始めるのもこの時間帯です。幼稚園や保育園ではお昼寝タイムとも呼ばれています。先人たちはこのような経験則を踏まえ、邪気の進入を防ぐため玄関を避け、これらの方位を鬼門と称したのです。
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